こもれび図書館ブログ
2015.01.23
「蜜柑」と「恋文」と芥川
平成27年1月15日に、第152回芥川龍之介賞・直木三十五賞の受賞作が決定しました。
(芥川賞:小野正嗣さんの「九年前の祈り」/直木賞:西 加奈子さんの「サラバ!」)
芥川賞とは、菊池寛が友人芥川龍之介の業績を記念して、直木賞とともに創設した賞です。
その、芥川龍之介の代表的な作品といえば、『羅生門』『鼻』『蜘蛛の糸』といったところでしょうか。
数ある芥川作品の中でも、司書Mがこの時期にオススメしたい作品を2点ご紹介します。
まず、一点目は『蜜柑』(みかん)。
この寒い季節、日本人の冬には炬燵に蜜柑だと思うのは私だけでしょうか?
この『蜜柑』という作品は、主人公(私)が体験した、列車の中での出来事が描かれています。
「垂れ込める冬の曇天、冷たく無機質な列車、全体的にモノクロな世界で、さらに不機嫌さを増す私。
そこに現れた少女(娘)の行動は、私の神経をさらに逆なでしてくる。
だが、娘が列車の窓をむりやり開けたかと思うと、娘は持っていた五六個の蜜柑を窓の外に向かって投げます。車窓の外には、おそらく娘の弟と思われる男の子が三人。
その光景を目にした私は、娘の身の上と今の行動の意味を感じ取るのです。」
モノクロの世界に、娘が投げた蜜柑のオレンジが色鮮やかに目に浮かびます。
この時期、蜜柑のオレンジを目にするとこの作品が頭をよぎらずにはいられません。
短編作品ですので、さらりと読めますよ。
(『斉藤孝のイッキに読める!小学生のための芥川龍之介』講談社 にも掲載があります)
そして、二点目
2月14日のバレンタインが近づいてきました。
街中が情熱的になる季節にピッタリなのが、芥川龍之介が後の奥様、塚本文さんに宛てた書簡(恋文)です。 『芥川龍之介全集』第10巻(岩波書店.1978)P313~に記載されています。
「~(中略)僕には 文ちゃん自身の口から、かざり気のない返事を聞きたいと思ってゐます。繰返して書きますが、理由は一つしかありません。僕は 文ちゃんが好きです。それだけでよければ 来てください」
(芥川龍之介『芥川龍之介全集』第10巻(岩波書店.1978)P314 一部抜粋)
さすが、文豪は恋文も情熱的です。
季節から連想して、読む本を選ぶ読書も乙なものです。
ここまで長々と読んでいただきありがとうございました!
それでは、よい読書体験を★ (くまモン大好き司書M)